令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)が出ました

この集計、毎年出てましたっけ?

今回、派遣の統計について検索し、初めて知ったのですが、毎年出ているようです。派遣かふぇで取り上げることのある統計データは、派遣労働者実態調査で、こちらは4年に一度行われていて、最新が平成29年です。少し感覚が空きすぎているのではないかと感じます。

今回は、令和2年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)について見てみたいと思います

 厚生労働省では、このほど、「労働者派遣事業報告書」(令和2年度報告)集計結果(速報値)をまとめましたので、発表します。

「労働者派遣法」(※)では派遣元事業主に対し、それぞれの事業年度毎の運営状況についての報告書を厚生労働大臣に提出するよう定めています。

令和2年度の集計については、報告対象期間(各派遣元事業主の事業年度)の末日が、令和2年4月1日から令和3年3月31日の期間内に属する報告について集計したものです。

(※)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

毎年出ているのですが、令和3年の結果がだいぶざっくりしてたので令和2年と比較してみました

全部で5項目

詳細な調査ではないので、ざっくりな項目が5つ派遣労働者数

  1. 派遣労働者数
  2. 派遣先件数
  3. 年間売上高
  4. 派遣料金(8時間換算)(平均)
  5. 派遣労働者の賃金(8時間換算)平均

派遣会社の数は出さないのですね。コンビニよりも多い、アメリカよりも多いと言われていた事業者数。皆さんが一番興味があるところだと思うので、ぜひ載せてほしいなと思います。

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

1.派遣労働者数

 派遣労働者数・・・・・・約193万人(注1)(対前年度比:4.9%増)

  (1)無期雇用派遣労働者         712,896人(対前年度比:18.0%増)
  (2)有期雇用派遣労働者        1,213,591人(対前年度比:  1.5%減)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

増えてますね。
4.9%増で193万人だそうです。(※注1 各派遣元事業主の報告対象期間の末日現在の実人数を計上。)
令和元年が約184万人(対前年度比:9.1%増)、平成30年は約168万人(対前年度比:4.4%減)です。正社員の増減がわからないので、専業主婦が派遣デビューしたのか、失職した人が派遣になったのか、といった背景までは見えませんが、派遣会社は利益を出すために、派遣で働く人を増やし、派遣を使う企業を増やすために日々営業活動に邁進しています。規制を強化しない限り、派遣というキャリアパスを詰めない雇用につく人が増え続けるのでしょう

無期雇用派遣が18%も増えています。テレビ番組でも若年層を集めるために「正社員型派遣」を募集しています。
派遣会社の正社員は派遣では?と思われた皆様・・・

正解です。

国会でも派遣会社の正社員は正社員ではなく派遣という答弁が出ています。派遣先では無期雇用派遣も有期雇用派遣も同じ「ハケン」です。

「3年を超えても働き続けられる」年齢を重ねて転職が難しい派遣労働者にとっては安定が得られるかもしれませんが、派遣のまま便利に使い続けられ切られるときはアッサリ切られます。

正社員型派遣は無期雇用派遣であり正社員ではないということを覚えておくとよいかもしれません。

2.派遣先件数

派遣先件数                     約75万件(対前年度比:7.6%増)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

派遣先件数は前年度よりも7.6%増えました。派遣労働者が4.9%しか増えていないので、1社あたりの派遣の数は少なくなっているのかもしれません。

令和元年は約70万件(対前年度比:1.2%増)、平成30年は約69万件(対前年度比:2.5%減)。1年間で5万件も増えました。派遣会社の営業活動の成果でしょうか。中抜きされ続ける間接雇用の派遣労働者が増え続けていますが、本当になんの規制もしなくてよいのでしょうか。

そもそも1社で派遣1人の企業もあれば、100人を超える派遣を使う大企業もあるので、派遣先件数だけでは意味がないように思えます。この項目、実は派遣会社の数を載せようとしていたが何かの力で差し替えられたのでは?と穿った見方をしたくなるくらい、これ聞いてどうするのかしら?という印象があります。

3.年間売上高

年間売上高                 8兆6,209億円(対前年度比:9.6%増)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

売り上げてます。この不況に絶好調です。前年度比9.6%増。過去最高益を更新した派遣会社もチラホラ。有料記事で見られないリンクもありますが、見出しからも好調さが伝わってきます。

 令和元年は7兆8,689億円(対前年度比:23.3%増)平成30年は6兆3,816億円(対前年度比:1.8%減)です。令和元年の売上高の増え幅はすごいですね。にも拘わらず、パーソル、リクルート、パソナが令和2年に過去最高益を更新しています。

パーソルHDの22年3月期最終、最高益 派遣・転職回復

リクルートが最高益 3000億円、採用需要が増加

パソナG最高益

派遣は賞与込みの時給になっていますが、派遣会社の正社員は賞与が出ます。
もしかしたら期末ボーナスも出ているかもしれませんね。

雇用の原則である「直接雇用」派遣の原則である「一時的、臨時的」が守られていれば、企業に直接雇用されていたはずの派遣労働者。その売り上げは彼らが働いて得た労働の対価なんですけどね。

4.派遣料金(8時間換算)(平均)

派遣料金(8時間換算)(平均)(注2)      24,203円(対前年度比: 2.4%増)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

(注2)「派遣料金」は、労働者派遣の対価として派遣先から派遣元事業主に支払われるもの。
    また、派遣料金は、消費税を含む額の記載である。

 令和元年は23,629円(対前年度比: 2.5%増)、平成30年は23,044円(対前年度比: 8.9%増)です

派遣料金は2.4%しか増えていませんが、純利益が9.6%増。賞与退職金込みになった派遣労働者の賃金が増えたことは素直に嬉しいです。売上高が減った平成30年でも派遣料金が上がっているのは、同一労働同一賃金の効果でしょうか。もしかすると、その余波で、その後の上がり幅は少ないのかもしれません。

5.派遣労働者の賃金(8時間換算)(平均)   

派遣労働者の賃金(8時間換算)(平均)    15,590円(対前年度比: 2.3%増)

令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)

 令和元年は15,234円(対前年度比: 2.3%増) 平成30年は14,888円(対前年度比: 7.6%増)

派遣料金も派遣労働者の時給も増え幅は似たようなものですが、派遣料金が賃金よりも増え幅が0.1%だけですが多いです。0.1%だけなのですが、それでもマージン分が多く増えている・・・と思ってしまいます。その前2年間を見ても、常に派遣労働者の賃金よりも、派遣料金のほうが上がり幅が大きく、常にマージンを多めに取ろうとする派遣会社の姿勢が見える結果となりました。

集計結果を見て・・・

派遣会社の数の公表はマストです。派遣会社の数が公表されていない、ということが分かっただけでも、この集計に気が付いてよかったなと感じています。

派遣料金や派遣労働者の賃金の上げ幅に比べて売上高の上がり具合がえげつないという印象を受けました。派遣料金と派遣労働者の賃金の推移で、マージン分がジワジワ増えているのが可視化されましたが、それだけでは説明がつかないように思えます。派遣以外の事業が好調だったのか、正社員登用の移籍費用か、はたまた他の要因があるのか、売上高の内容が気になります。

派遣という外貨も稼がず内需も生まない、キャリアパスをつなぎづらい雇用に人を送り込む事業が好調な国に果たして未来があるのか・・・。改めて派遣制度のおかしさ、不要さを訴えていく必要性を感じた集計でした。

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