正社員と派遣の賃金格差について

第13回派遣かふぇは石橋みちひろ議員をゲストにお迎えしTwitterスペースで開催しました。

コロナと物価高で、皆様少しの出費も抑えたいだろうということで、第13回派遣かふぇはtwitterスペースを使いラジオのような形でお送りしました。盛りだくさん盛り込んだ回となりました。録音が出来ておらず、石橋議員の解説が記憶を振り返りながらになっていますがレポにまとめました。

きっかけ

今回、派遣かふぇをtwitterスペースで開こうと思ったきっかけが、兵庫県明石市の泉市長が投稿した5月14日のツイートです

このツイートに2.4万件のいいねち様々なリプライ(返信)がつきました

当事者の方の声を取り上げる派遣かふぇですが、同時に様々な立場からの声を聞くことも必要と考え、今回はこのツイートについたリプライから派遣問題について掘り下げました。

それではスタート

  • 1.派遣に関する統計

泉市長のツイートには2倍以上の格差を示すグラフがついていて、平成29年の賃金構造基本統計が出典となっています。45歳から49歳で、正社員が時給換算で2765円、派遣社員が1330円、パートが1092円で、非正規と正規の間で最大2倍の差がありますよというものです。
これに対してのリプライ(返信)を拾いながら派遣制度について石橋議員に話を伺いました。

まず最初に取り上げたリプライ

この方が引用した賃金構造基本統計調査には非正規と正規の比較しか載っていませんし、一般労働者には役員も含まれます。ただ、フルタイムとパートタイムで分けて統計を出しているのでアルバイトはパートに含まれます。グラフに表示されている数字は各雇用形態のピークの値なので、この2つで2倍の差が無いとするのは違います。派遣との比較ではないというのはその通りです。

泉市長のグラフと同じ45歳から49歳で見ると正規雇用の賃金は36.5万円、非正規は21.2万円で格差は1.7倍です
子どもが大学に進学し住宅ローンを抱える年齢と言うことを考えると、2倍かどうかにこだわるよりも、21万円という賃金で結婚出産出来るのかという部分が気になりました。非正規という雇用形態は少子化にダイレクトにつながっているように感じます。

では、ここから派遣についての統計に入っていきたいと思います

実は派遣労働者の統計データって少ないんですよね。厚労省が公表している派遣労働者実態調査があるのですが、最後の集計が平成29年。最新の状況を把握しているとは言えず、さらに賃金については年齢別にはなっていません。

「1,000 円~1,250 円未満」が 35.5%と最も高く、「平均賃金」は 1,351 円となっています。派遣も契約社員も同じ非正規なので格差が2倍というのは別に間違ってはいないと考えます。

ちなみに、これを性別にみると、男が 1,496 円、女が 1,236 円です。
さらに年齢別に掘り下げたいとe-stat(政府統計の総合窓口)で検索してもすごく沢山出てきて、元となるEXCELデータに辿りつけません。家事を追えて11時過ぎにパソコン開いてあっという間に12時過ぎてしまう。素人が派遣だけのデータを仔細に出したくてもなかなか手が出ない状況でなのです。

(この状況から脱するために派遣かふぇは法人化を目標にしていますが資金、人材の双方で壁にぶつかっています。)

派遣の現状については人材派遣協会がHPで公表していて、よく言われる派遣会社の数が6万件というネタ元もここです。

労働者派遣事業所数

事業所数は2015年が77,956件とピークで、特定労働者派遣事業が廃止され、許可制に一本化されたこにより2018年には38,128件と半減しています。

派遣事業売上高

売上高は2015年は5兆6,790億円、2018年は6兆3,816億円、派遣労働者数は2015年、2018年ともに133万人となっています。

最近、派遣会社が過去最高益を更新という報道をみかけるので今後の調査結果も注目したいところです

一番重要な賃金は?

売上高と派遣労働者数が増えているけど派遣労働者の賃金はどうなのかというと、同じページに派遣労働者の賃金に関しても記載があるのですが、2015年と2018年の比較になっていません。賃金だけ2017年の全国平均と各地方との格差を表にしています。

これでは、売上高が上がっている分派遣労働者の時給に還元されたのかを判断することが出来ません

世界との比較をしている「世界の派遣」、こちらも正確に比較出来ているとは言えません。

日本の派遣事業者数と売り上げの推移を載せたものですが、比較対象が世界となっています。パっと見ると日本の派遣労働者数が少ないように見えます。世界の派遣労働者数は減っているのに売上高が伸びています。日本に外の先進国の賃金は上昇しているのでこういったグラフになりますが、国別になっておらず比較しづらいです。

続いては世界平均の派遣浸透率です。標準は1.6%に対して日本は2.0%、おおよそ世界標準の値となっています。トップのイギリスの派遣事業者数が分からないんですよね・・・

派遣事業者数は日本がトップというネットで有名なこの画像

元ネタは恐らくこちらだと思います

これはCiett(国際人材派遣事業団体連合)が公開していたエコノミックリポートのグラフがもとになっていると考えられるのですが、、このページがどこにもありません。

人材派遣協会にもエコノミックリポートへのリンクがあるのですが、2016年度版からしかなくURLアドレスを2013にしてもデータはありません。Ciettも2016年にWorldEmploymentConfederationに名称変更され、以前のエコノミックリポートを見つけることが出来ない状況となっています。2016年からのエコノミックリポートは各国の事業所数の比較は公表されておらず現在の各国の派遣事業者数を調べることは出来ませんでした。

人材派遣協会は理事のページを見てもらうとわかりますが、大手派遣会社のお名前が並びます。公益代表?なのか弁護士さんが2名と連合の代表がお一人だけ入っています。連合の役割を批判する声もありますが、たった一人だけです。しかも日本は労働者の労働組合加入率が2割以下、特に派遣は組合加入者がさらに少ない状況なので、連合が発言力を持つのは難しい状況であるのは仕方がないとも言えます。

「派遣労働者は立場が弱い」「派遣は誰も守ってくれない」というのは、こういった背景があることを知ってもらえたら嬉しいです。

石橋議員に聞いてみた

最初の質問ですが、統計データの公表の仕方について現状、派遣の実態を把握できるようになっていないと思うのですが、これを改善してもらうのは難しいのでしょうか?

石橋議員からは、統計がきちんと出てこないことに関しては国会でも何回も取り上げてお願いしているのですが、なかなか改善されないとのお話がありました。

雇用安定措置が適切に行われたかどうか調査をするようにという質疑もしていました、実態がどうなのか対応中に調査しないと見えないという質疑に対して終わった後に調査するとの答弁がありました。調査結果は出たのですが、ハケン白書で指摘した通り、実態が把握できているとは言えない状況でした。

派遣は統計データでも実態やその影響の把握が難しくなっていて、賃金だけでなくここでも正規雇用と比較して格差があるのか・・・と感じました。

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