厚生労働省が派遣の原則「一時的・臨時的」をコッソリ削除 ?!
雇用安定措置が始まる10月1日を前に厚生労働省のHP「訪れた方も多いと思ます。
今回の派遣法改正についての情報が載っている「派遣で働くみなさまへ」というPDFファイル、実は改訂版です。
派遣法改正直後に掲載されてから時間が経っているので、見やすく改善されたのかなと軽く考えていましたが、派遣社員にとって一番大切な大原則が削除されていました。
現在トップに掲載されている案内で強調されているのは「3年」
この派遣法改正案の審議では派遣切りが横行するという野党からの指摘に対し「正社員を希望する派遣社員には、その道が開けるようにする」というい答弁を繰り替えしっ強行採決されました。
【派遣法】繰り返される「『正社員化』を促進する」という安倍総理の無理な説明(yahoo記事)
前の案内には「一時的・臨時的」の文言がある!
この案内は同じページの下の方に存在しています。
改訂版を出した真意は不明ですが、一番大切な派遣就業の原則をあえて削除したことに意図を感じます。
この改正は派遣の正社員化を目指すものと当時の塩崎国務大臣が答弁!
派遣法改正時の趣旨説明では、派遣法改正のベースは「派遣就業は臨時的かつ一時的なもの」という説明がされています。
下記に当時の議事録を抜粋しました。
議長(大島理森君) この際、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。
〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕
○国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
労働者派遣制度は、我が国の労働市場の中で、労働力の迅速かつ的確な需給調整を行うという重要な役割を果たしています。
一方で、業務単位で期間制限を設けている現在の制度はわかりにくいとの指摘もなされており、労使双方にとってわかりやすい制度とするとともに、派遣労働が雇用と使用の分離した形態であることに伴う弊害を防止する必要があります。
このため、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方のもとに新たな期間制限を設けることとするほか、労働者派遣事業の質の向上を図り、派遣労働者の正社員化を含むキャリア形成を支援する等の仕組みを設けることで、派遣労働者のより一層の雇用の安定、保護等を図ることとし、この法律案を提出いたしました。
以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすることとしております。
第二に、厚生労働大臣は、労働者派遣法の規定の運用に当たり、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮しなければならないものとするとともに、業務単位の期間制限を廃止し、同一の派遣労働者に係る期間制限及び派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの期間制限の二つの期間制限を設けることとしています。また、派遣元事業主は、同一の派遣労働者に係る期間制限の上限に達する見込みがある派遣労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼等の雇用の安定を図るための措置を講じなければならないこととしております。
第三に、派遣元事業主は派遣労働者に対し、計画的な教育訓練等の実施や均衡待遇を確保するために考慮した内容について説明をしなければならないこととするとともに、派遣先は、賃金の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して配慮しなければならないこととしております。
最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成二十七年九月一日としております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
”第189回国会 本会議 第22号 平成二十七年五月十二日(火曜日)議事録”
強行採決に対して野党が付けた付帯決議案
派遣社員の正社員化を答弁しているのに罰則もない抜け道だらけの改正案は、3年ごとの派遣切りが横行するという野党の反対を押し切り強行採決されました。問題の多いこの法案には前代未聞の39項目の付帯決議がついていますが、その最初に掲げられているのが、派遣就業の原則「臨時的・一時的」です
下記はその付帯決議を抜粋したものです
一、労働者派遣法の原則について 1派遣就業は臨時的・一時的なものであるべきとの基本原則については本法施行後も変わらないことに 十分留意し、かつ、派遣労働が企業にとって単純な労働コストの削減や雇用責任の回避のために利用さ れてはならないことを再確認し、労働者派遣法の規定の運用に当たること
”労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する
法律案に対する附帯決議”
にも拘わらず、この原則を派遣社員への案内から削除しました。おそらく
・3年ごとに派遣社員を入れ替える企業の姿勢
・3年縛りの派遣求人の存在
・直接雇用回避の横行
このあたりが、派遣就業の原則とあまりにも乖離し企業のやりたい放題になっている現状を、派遣社員に気が付いてほしくないのでしょう。
2005年に放送されてそのセリフが今の日本と一致しているとネットで話題になったこの言葉を思い出しました。
派遣の原則「臨時的・一時的」を広めませんか?
「臨時的・一時的」の原則があるにもかかわらず、便利に使い続けられる派遣社員が減らないのは何故でしょう。
おそらく、長期派遣に従事する派遣社員や企業で働く正社員を含むほとんどの労働者が、この原則を知らないからかもしれません。
ですが、企業は知っています。知っているうえで合法な派遣の使い方を日々模索し実行しています。
派遣制度と派遣法について調べれば調べるほど「無知は罪」という言葉の意味を実感しています。
私も含めてこれを知らずに不当に搾取されてきた人、これからも搾取され続ける人のために、この原則が広まれば嬉しいです。