高木錬太郎議員主催の派遣法勉強会に行ってきました!
安倍総理の「希望すれば派遣社員も正社員に」という答弁のもと、強行採決された改正派遣法。
10月の施行を前に派遣社員の直接雇用が進むと思いきや、契約終了や派遣元での無期雇用での直接雇用回避が主流となりつつあります。
今回は、私の声に応えてくれた高木議員のオープンミーティングの様子をお伝えします。
派遣法について行動を始めたきっかけの会
立憲民主党の高木錬太郎議員が主催する「錬さんのおしゃべりサロン」にお邪魔して、さらに深い話をしたのが4月。
↓ その時の記事はこちら
https://hakencafe.cew.cloud/2018/04/23/lobbying
専門ではないこの問題に興味を持ってくださり、近いうちにおしゃべりサロンで派遣法について取り上げましょうと言っていただきました。
あれから2か月、派遣法をテーマにしたおしゃべりサロンの告知が!
草の根の声を拾ってくれてありがとうございます!!!
「錬さんのおしゃべりサロン」のコンセプト
・結論や答えを出すことを目的としない
・高木議員の考えを紹介することが参加者の考えるヒントにつながるかも
・みなでガヤガヤと喋りあうことで知識が深まったり、考えが固まったりするかも
私は2回目の参加なのですが、最初にお邪魔した時より格段に増えた参加者の数からもこの会の魅力が感じられます。
分かっているようでわかていなかった派遣法の成り立ち
この会のために派遣法改正の経緯や欧米との比較などを勉強された高木議員。まずは派遣法の成り立ちと欧米との比較について説明がありました。
派遣労働者の数は中国に次いで2位。アメリカよりも派遣労働者が多いことに驚きました。
そして、1999年の派遣法改正(専門業務に特定されていた派遣が原則自由化)が、ILO181号条約への批准を受けたものであったということを初めて知りました。
ILOとは?
ILOとは「社会正義と人権および労働権を推進する」国際労働機関です
181号条約がどういったものかというと
派第181号条約は、民間職業仲介事業所のサービスを利用する労働者の保護と共に民間職業仲介事業所の運営を認めるに当たっての枠組みを規定する。
ILO国際労働機関「1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)」より
だそうです。
ちょっと堅苦しいですね。
私はいまから11年前のILO総会のときに、日本政府の一員として出席しておりました。まさに181号条約の審議、採択のただ中にいました。その当時の率直な感想を言うと、ヨーロッパの労働組合側もこういう事業を禁止する、規制するのではなく、そういう中で働く労働者の権利をいかに守るか、いかに保護していくかという方向に完全に舵を切ったんだなあということを、当時のILO総会の場にいて強く感じたということです。
hamachanの労働法政策研究室
「労働者派遣法の経緯と動向について」より
これだと分かりやすいのではないでしょうか
日本だけではなく規制緩和は世界の流れだったということですね。
問題なのは、日本は欧米に比べて正規ー非正規間の雇用の流動化が少ないこと。
派遣制度において労働者の保護より業界の要望が優先されていること。
これら日本独特の労働環境により、格差の拡大や固定化が進んでいると感じました。
実は、今回の記事を書くにあたり派遣法の歴史について調べていたら、気になることが色々と出てきました。このあたりは別の記事で書いていこうと思います。
派遣を含めた非正規労働者の生きづらさ
20名ほどの参加者からも意見が出ました。
・人の匂いのしない社会になっている
・同じ企業で働いていても新卒と非正規は別のレールがあり、新卒は大切に育てられるが非正規は高スキルを求められる
・日本は少子化で労働者は大切な資源なのに、なぜ大切にしないのか
などなど。
私は、企業が人件費をコストとして見ている。派遣は人件費ではなく物品費として扱われており、もはやモノ扱いであることや、派遣会社には生産性がなく短絡的なコスト減は出来ても、長い目で見るとマイナスであり誰も幸せにならないと話しました。
他にも、非正規社員から正規と非正規で昇給や手当など明らかな差があることや、非正規公務員の方からは法改正により格差が固定されるのではという不安が伝えられました
色々調べてみたけど、やっぱり派遣はだめ
参加者の意見が出た後で、高木議員がご自身の考えを話されました。
ILO条約を踏まえると、単純に派遣法を元に戻せば良い話ではないということが分かった。今回色々調べてみたのですが、やっぱり派遣は良くないというのが現在での考えとのこと。
その理由を5つ挙げられました。(高木議員のお話の内容がうろ覚えだったので、ネットから引用して補足しました)
1.派遣労働者の賃金は労働の対価ではなく、労働契約の根本原則を壊している
賃金とは、一般に、労働の対価として使用者が労働者に支払うものをいいます。労働契約法は、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と規定しています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構「Q1 法律上、賃金とは何ですか。」より
第二章 労働契約の成立及び変更 (労働契約の成立) 第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する
独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働契約法」より
2.雇用関係と使用関係の分離
派遣労働では、労働者は労働契約を結んでいる会社(派遣元)と、指揮命令を受けて実際に働く会社(派遣先)とが異なり、賃金は、派遣元事業主から労働者に支払われます。このように、派遣労働は、雇用関係と指揮命令関係が分離している点において、一般的な雇用形態とは異なっており、そのため、派遣元事業主と派遣先との間で責任の所在をあいまいにされトラブルが発生したり、労働条件や就業環境の面で不利益な取扱いを受けるケースも多くなっており、派遣法改正(2012年10月1日施行)により改善されることが望まれます。
水谷法律事務所「派遣労働とはどういうものなのでしょうか」より
○辰巳孝太郎君:大臣、もう一度。直接雇用は原則ですね。
○国務大臣(塩崎恭久君):今申し上げたように、法律で定められて直接雇用が原則だというのは存在をしておりませんけれども、考え方としては、直接雇用が原則であるという考え方を私たちも持っているということであります。
たつみコータロー参議院議員公式HP「直接雇用が原則 派遣法改悪案は「間接雇用促進法」 絶対廃案に」より
3.労働条件の決定を派遣元と派遣先にゆだね、労働者本人を排除
労働基準法 第2条(労働条件の決定) 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
【解説】
労働者と使用者が対等の立場であることは事実上困難であることから、労働組合法では、労働者には労働三権(団体権、団体交渉権、団体行動権(争議権))が認められています。
まほろば「労働基準法 第2条(労働条件の決定)」より
4.組合結成が時間的、空間的に困難であるため団結権や団体交渉権が制限されている
今春闘では、労働者間での格差が鮮明になっている。 大企業が社員のベアを実施する一方、派遣労働者のほとんどは要求提出すらできていない。要求した人たちも、経営側の厳しいはねつけに遭い、交渉は初夏までずれ込み泥沼化。 すべての労働者に団結権や団体交渉権を保障する憲法28条が骨抜きになっている実態が浮き彫りになっており、派遣労働者の春闘は冬の中である。 この派遣労働者は、小泉純一郎政権下の規制緩和により2013年時点で116万人にまで増加。安倍晋三政権は、「受け入れ期間3年」の上限撤廃を進め、さらに増やそうとしている。 和光大学の竹信三恵子教授(労働社会学)は「集団」で交渉するのが賃上げ交渉だが、派遣労働者は個別に切り分けられているため、集団交渉ができない。 憲法が保障する団体交渉権を事実上奪われており、脱法的だ。「正社員やパートなどが派遣に置き換わっていけば、労働者全体の賃金が抑制され、日本経済への悪影響は甚大である」と指摘している
新さかど 日本共産党坂戸市議団「派遣の春闘、冬の中」より
5.雇用関係は労働者と派遣元であるのに、就労の場は派遣元と派遣先の契約が続いている場合のみ
無期雇用派遣は、「無期の契約」ではあるものの正社員ではなく、また「契約解除(=解雇・クビ)」の可能性があります。「派遣切り」とは異なりますが実態は同じです。従って、「無期契約だから安泰!」と怠けるのではなく、高い向上心を持った仕事への取り組みが求められます(当然ですが)。
しかし、正社員でも通常の派遣社員でもない無期雇用派遣において、そのモチベーションを維持するのは現実的に非常に難しいでしょう。
これがワークライフバランスを保つために「派遣社員」として明確な目的を持って働いている方なら別ですが、新卒派遣や第二新卒として無期雇用派遣に挑戦した20代半ばの方なら年を重ねるごとに「このままでいいのか」「やっぱり正社員になりたい」と不安・ジェラシーを感じる機会が増えるはずです。
派遣ガールズ「【無期雇用派遣】実は危険な働き方…メリット・デメリットを解説」より
これ以外にも、ジョブ型雇用についてや氷河期世代の問題にも言及されていました。
補足してみた
上記の5点について、私なりに補足してみました。
- 労働者(派遣社員)の賃金が、使用者(派遣先)から直接支払われておらず、派遣元のマージンを抜いた分が労働者(派遣社員)の賃金として支払われている点が原則と矛盾している。
- 労働者(派遣社員)が雇用されているのは派遣元だがが使用されているのは派遣先であり、直接雇用の原則と矛盾している。1986年に制定された「労働者派遣法」の下一定のルールに従って行われている事業についてのみ、人材派遣は例外的に許されていたが、業種の制限が拡大された現状の派遣法において、直接雇用の原則との矛盾は許されるのだろうか。
- 「派遣会社から聞いていた内容と違う」、「派遣先の社員が契約外の業務を命じてくる」などといったトラブルが生まれる要因かもしれません
- 派遣会社先に派遣が一人だったり、複数の派遣会社が入っていたり団結するはおろか、お互いの時給すら知らないことが少なくありません。
- 派遣先との契約終了後に派遣元から次の派遣先の紹介がありますが、就労の場が変わるたびに派遣先企業独自のルールや仕事の進め方なども変わり、その都度覚え直しとなります。さらに派遣先が変わるごとに職歴がプラスされるため、転職回数の多さがマイナスに働く日本の転職市場を考えると、無期雇用派遣が安定とはいえません。
労働者を保護する法律の隙間をぬって存在する「派遣」の存在意義について考えさせられるご意見でした。
参加してみて
まずは派遣制度の問題点について真剣に取り組んでくださったことが、本当に嬉しかったです。
若者と高齢者の雇用が回復するなか、派遣を含めた非正規から抜け出せない人の多くが私を含めた氷河期世代と言われています。その氷河期世代について、彼らの社会保障費は15年後には大変なことになるだろうと危機感を持ってくれた点も心強かったです。
また、提案されていたジョブ型雇用は派遣社員を救うかもしれないと感じました。
というのは、私の仕事は専門26業種のためか正社員での求人がほとんどありません。正社員を目指すには、派遣からの正社員登用か未経験で異業種に転職するしかないのです。
でも、メンバーシップ雇用からジョブ型雇用になれば正規と同じ待遇の求人が出てくるかもしれません。ただ、派遣という雇用形態が存在する限り企業はコストの低い派遣として使い続けるでしょう。そのためには「派遣は一時的、臨時的なもの」という原則に基づいた「長期派遣の規制」が絶対条件になると考えられます。
私個人の反省点もありました。「派遣は一時的、臨時的なもの」という原則をないがしろにしている現状を知ってもらったうえで、そのリスクを派遣労働者だけに負わせている現状と派遣社員はどのようにその価値を上げていけたらよいのかをお伝え出来たら良かったなと。
発言の機会を与えていただいたのですが、しょうもないことしか言えなかったです。
決定力が無いというか、プレッシャーに弱いというか・・・。
そんな思いのなか高木議員にお礼を伝えに行ったところ、こんな言葉をいただきました。
『「派遣は努力してこなかったから仕方がないと」いう意識が、派遣社員本人を含めて蔓延しているが、それは間違いで仕組みの問題です。継続して意見交換していきましょうね』
と。
私も、「派遣は一時的、臨時的なもの」という原則に基づいた「長期派遣の規制」を求めて、継続してこの問題に取り組んでいきたいと思いました。
高木議員と関係者のみなさま、ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。