第2回派遣かふぇレポ

第2回もやはり濃い内容の話が止まらない

東京の場所を移した第2回派遣かふぇ、今回も自己紹介がてら抱えている思いをお話いただきました。記憶を堀り起しつつお伝えしたいと思います

・派遣先企業との契約期間が3年を超えたため直接雇用の申込みをした。プロジェクトごとに就業場所が違うため契約期間が通算されず、直接雇用の申込資格がないと言われた。プロジェクトが3年を超えることがないため、何年働いても一生派遣になってしまう。直接雇用を目指して細かいところをフォローしたり契約外の業務をこなしていたが、今はモチベーションが無く時給を稼ぐためだけの毎日。

・新卒で派遣会社の正社員になった若者が派遣されてきた。職場は派遣として採用しているが、本人は正社員のつもりでいる。担当している業務は雑用や後方支援なのでキャリアにはつながらないが本人は気づいておらず、なんとも言えない気持ちになる。正社員で求人を探すと派遣会社ばかりがヒットする。綺麗なウェブサイトに将来性を感じるような言葉が並ぶ。話だけ聞きに行けばオフィスは綺麗だし派遣先は大企業が多い。若い子は惹かれてしまうのも理解できる。正社員を派遣契約させないような法規制が必要。

・正規雇用を派遣先に希望したが断られた。無期転換すると時給が下がるため派遣会社を変えた。派遣先は金額が上がるが知らない人をゼロから教えるよりはと派遣先変更を受け入れてくれたため、ひとまず無期になった。仕事を選べなくなったので有期雇用に変えてほしいと相談したところ、派遣会社会社を辞めて有期に戻れと言われる。有給などもリセットになるため我慢している。

・派遣会社は派遣社員がつながりを作ることを嫌がる。無期転換ルールについても合同説明会のようなものは開かず派遣社員一人一人を呼び出して伝える。派遣社員には知識も無く仕方がないと受け入れてしまう人も多い。

・WEB業界の大手企業は下請けに業務委託し孫請け(派遣労働者たち)が現場を回している。派遣契約は教育の責任が曖昧になるため、若い子にやらせるとキャリアパスがもったいないことになる。その人たちに対して企業からは仕事できないとの批判があるが何なのだろうと思う

・全く未経験研修なしで現場に入ってきたSES。受け入れ先の社員は育成を客先常駐のエンジニアに丸投げ。教えている分時間を取られることは考慮されない。結局その人は他のところへ移ってしまった。

・障碍者雇用の直接雇用非正規をしている。10年以上働いて職場のことも良く分かっているが時給は上がらない。この雇用形態の人は時給いくらまでと決まっている。フルタイム勤務の人は月給制契約社員になれるチャンスがあると言うけれど、いざ蓋をあけると開発か総務人事の人だけ。

・フリーランスをしている。仕事が少ない時などに日雇いスポット派遣を利用して上手く働けていたが、日雇い派遣禁止の余波を受けて大変な思いをした

・体調が安定しないため正社員で働くことが難しい。スポット派遣で生計を立てたいのに出来なくてつらい

・ブラック企業にいた。正社員は定額働かせ放題。若いから出来たけど当時の同僚は鬱になったり自殺したと聞いている。労働組合もあるけど三六協定を結びたがらない。新卒から労働組合にいるせいか異常さを理解していない。それに比べると派遣は天国。残業や契約外業務は営業に報告すれば改善される。直接雇用が幸せかという考えは危ない

・バブル期に正社員をしていたが辞めて派遣社員に。派遣社員の方が何倍も大変なのに給料が安くて驚いた。スポット派遣はホームレスがやっている印象があったが、普通の若い子も多い。実家暮らしで働きたいときに働くスタイルという印象。ただスポット派遣で一人暮らしは厳しいと思う。

・お菓子会社で派遣150人に社員3人。社員は使われ過ぎている。オールマイティに動いて社員よりも出来る派遣社員もいるので、正社員にしてあげたらよいのに。

・物流会社は外国人ばかり。商品の扱いが雑で投げたりする。いくら人手不足で安い労働力が欲しくても、将来的にこれで良いのかと感じた。

・簿記1級持っているのに、正社員がやりたがらないコピーとかの雑務も多い。「派遣さん」と呼ばれるのも納得がいかない。外国人が増えてきた。安い金額でもやるので、40代50代だと外国人に負けてしまう。

・中途や契約社員を安く買い叩く。直接雇用になると単価が下がる場合が多い。

・講師として入社したが業務委託契約にされたため、震災後に授業が無くなった時の保障がなく労災もなかった。派遣の方がマシになってしまうような待遇の企業しかない。

濃すぎるほど濃い

みなさんの話をじっくりと聞き、メモを取り、同じように怒ってくれる石橋議員に、つい色々と話をしてしまうのでした。

派遣労働について

石橋議員は派遣契約の特徴でもある『間接雇用』から生じる様々な問題、特に直接雇用の正社員や非正規労働者とは違い三角関係であることに問題の根深さがあることを危惧していました

2012年派遣法改正(民主党政権)

民主党政権で行われた労働法と派遣法の法改正を受け、違法行為に対して全国で労働裁判が起き判決が積み上がっていったそうです。

2012年の法改正で初めて派遣法に派遣労働者の保護を派遣法で入れましたが、当時の野党(自民党公明党)の激しい反対で実現しきれなかったことを残念そうに話されていました。また政権交代後の2015年派遣法改正でその効果が削がれてしまったことで判決にも影響が出ており、派遣労働者をとりまく状況は厳しいものとなっています。

2015年の法改正「派遣社員の雇用安定化」って本当?

雇用安定化措置で期待されていた直接雇用の依頼には法的な縛りがなく、実現の可能性はかなり低いものであると野党議員から指摘されていたそうです。

実際、企業が直接雇用を進めることはありませんでした。私の派遣先も、派遣法改正を受けての経営陣の判断は、派遣社員の直接雇用を回避すること。派遣社員の無期雇用転換を進め、直接雇用の責任は果たしませんでした。

政府は派遣会社の無期雇用転換を安定としましたが、派遣先との契約は3か月更新は変わらないまま、安定とは程遠いです。石橋議員も「無期雇用契約だから派遣会社が次の派遣先を見つけると政府は言いますが、そんなことは今までもしていた。安定でも何でもない」と。

私たちと同じことを同じ目線で言える議員さんがいるのだなぁとビックリし、嬉しい気持ちになりました。

派遣法改正は野党の反対が強くメディアにも取り上げられました。野党が法の不備を見つけて廃案に追い込んだもののすぐに再提出、強行採決されました。その必死さは労働法、派遣法を改正することが自民党に課せられた大きな命題なのだろうと思わせる出来事でした。

正直なところ民主党政権の作った派遣法も自動的に派遣労働者の正規雇用化には結びつくようなものではなく骨抜き法案という印象でしたが、その骨抜きの派遣法すら許しておけない人たちがいることがショックでした。派遣社員を保護するような法案は不要なのだという彼らの強い思いを感じました。

当時、安倍総理が「希望される派遣社員が正社員になれるように」と答弁される様子が流れました。派遣社員のみなさん、その後はいかがでしょうか。私はこの改正により期間制限が業務区分から個人単位または事業所単位となり、直接雇用の資格がなくなりました。)

10.1問題とは?

2012年改正派遣法で偽装請負などの違法行為があった場合は雇用契約を結ぶことが出来る「みなし雇用」制度を作りました。この条文は企業にとってデメリットが大きく、与党はどうしても阻止したかったようです。

どのくらい阻止したかったかと言うと、10月1日に「みなし雇用」制度が施行されるのを防ぐために、9月8日に改正派遣法を強行採決し9月30日施行したのです。

通常は施行までに準備期間を設けるため、このような短期間での施行は異常で、現場は大混乱に陥ったそうです。直接雇用を望んで準備をしていた派遣社員のみなさんは、施工日直前にその望みが消えてしまったのかと思うと切なくなりました。

同一労働同一賃金

私からリクエストさせていただいたテーマは「同一労働同一賃金」でした。

同一労働同一賃金とは、今までパートのみなさんに適用されていた「職務内容が正社員と同様の場合は同じ待遇を」という均等待遇と均衡待遇の法案を、パートだけでなく派遣や契約社員などの有期労働者にも拡大した法案です。

良い法案に見えますが、直接雇用のパートと間接雇用の派遣を一緒にするのは無理がある気がしています。

配置換えなどの人事権の影響を受けるか、責任の程度が同じかなどを比較し、同じであれば同等に、違うのであれば合理的な説明を個々の労働者に説明する義務が生じるようになったそうです。

良い法律なので、しっかり運用されるよう声を上げていきたいと思います

派遣先じゃなくて派遣元の正社員と同一賃金?

ところが派遣労働者は間接雇用という構造的問題の影響を受けるため、パートのように簡単には進まないそうです。本来は派遣先で同一労働同一賃金の待遇改善をするのが筋ですが、選択制にされてしまったとのこと。

選択制にすると企業は当然派遣元での待遇決定を求めるだろうと野党が追及しましたが覆すことは出来ませんでした。

抜け道がいっぱい

すでに違いを出すために派遣には雑用や後方支援業務しか与えない企業も出てきています。企業が同一労働同一賃金を適用したくないという強い気持ちがこれでもかとばかりに伝わってきます。どこかで見た風景ですね。3年ルールの直接雇用を維持でも回避する、あの光景。派遣社員は正社員にもしたくないし正社員と同等の待遇も与えたくないようです・・・。

さらにこの同一労働とみなす条件、適用除外が設定されています。例えば、今派遣と正社員が同じ業務をしていても、正社員はキャリアコースに進むために一時的に担当している業務のため同一労働でも同一賃金にする必要がないケース。

(問題とならない例)
イ・基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給している派遣先であるA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。A社の通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得したため、その能力に応じた基本給をXに支給
している。これに対し、派遣元事業主であるB社からA社に派遣されている派遣労働者であるYは、その能力を習得していないため、B社はその能力に応じた基本給をYには支給していない。

派遣が正社員を教えている場合でも正社員が管理職候補であれば同一労働であっても同一賃金にする必要がないケース

ロ .派遣先であるA社においては、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、派遣元事業主であるB社からA社に派遣されている派遣労働者であってA社で就業する間は職務の内容及び配置に変更のないYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社がXにキャリアコースの一環として当該定型的な業務に従事させていることを踏まえ、B社はYに対し、当該定型的な業務における能力又は経験はXを上回っているものの、Xほど基本給を高く支給していない。

他にも適用除外となるケースがたくさん載っていますので下記のリンクからご覧ください

同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台 対照表(派遣労働者に関する部分)

同一労働同一賃金に向けた重要な判決が出た

ハマキョウレックス訴訟の判決は、正規と非正規について賃金や賞与、手当など個々の格差の妥当性を企業が証明しなければいけないという意味で、同一労働同一賃金の考え方に影響を与えると重要な結果なのだそうです。

労働裁判は原告個人だけではなく同じ境遇で働く人たちに広範囲に影響するものなのですね。その勇気と行動力に感謝したいと思いました

企業は派遣労働者の待遇改善につとめるのか?

建前上は派遣労働者を守るための法案ですが、裏返すと合理的に格差が説明できれば格差があって良いということになります。企業がどのような対応をしてくるか不安視していますが野党には出来ることが少なく、労働組合を回り周知と対策をお願いしているそうです。

派遣かふぇも微力ですが労働組合に加入していない派遣労働者への周知という方向性でお手伝いしていきたいと考えています。

たくさんの付帯決議をつけました!

付帯決議ってなんぞや?とお思いの方も多いと思います。付帯決議とは、その法律が運用上心配があるときに、この条文はこのように理解をし運用しないといけませんよと国会で決議したものだそうです。

働き方改革法案にはの付帯決議が47項目で最長だそうです。それだけ抜け道だらけで悪用されやすい法案とも言えます。ちなみに派遣法には39項目の付帯決議がついています。これらの付帯決議の多くは派遣かふぇゲストの石橋議員が直接書かれたものだそうです。

同一労働同一賃金は非正規労働者の待遇改善によって実現すべき

・派遣社員の待遇決定は派遣先が原則

この付帯決議はさきほど危惧した抜け道を抑制する効果があります。法的拘束力はありませんが、労働組合との交渉や労働裁判だけでなく、派遣営業から派遣元での同一労働同一賃金を持ち掛けられたときに「付帯決議34項に派遣先との近郊待遇が原則と記されていますが・・・」と返すことが出来ちゃいます。労働組合加入や労働裁判はハードルが高いですが、派遣営業との打ち合わせのなかで縛りをかけることが可能です。これなら少しの勇気があれば出来そうです。

無期転換をした無期雇用労働者は適用対象外⁉

今回の同一労働同一賃金は、パートと有期雇用派遣を対象にしたものなので無期雇用の労働者は対象外です。野党はそこも問題視して付帯決議をつけました。

正社員と非正規の分断。非正規の中でも直接雇用非正規と派遣社員の分断。そして派遣社員の中でも有期と無期の分断。同じ方向を向いてまとまることを阻止したいのかなと思わせるような内容で、どんよりした気持ちになってしまいました。

付帯決議を盾にして

恒常的に存在する業務を担う派遣社員を直接雇用に、直接雇用非正規を正規雇用にというのが自動的に行われていくような罰則付きの法規制が理想ですが、そのためには政権交代と自民公明と経団連の激しい抵抗を乗り越えないといけない厚くて高い壁があります。

政治に期待しても無駄なのだから資格を取って転職活動をというアドバイスをもらいますが、中高年非正規は経験を積んでも資格を取っても非正規から抜け出すことが難しい社会になっています。

ですが、今回付帯決議を知ることが出来たので悪意を持った提案には「付帯決議にこうありますよね」と伝えることが出来、少しだけ賢く強くなれた気がします。細々と継続して少しずつ社会を変えていけたら嬉しいです。

イベント情報などをtwtterで受け取れます

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA