第3回派遣かふぇレポ

なんと国会へ

第2回派遣かふぇの雑談での何気ないひとこと「厚労省の職員さんが派遣かふぇに興味を持っていました」を聞いて、無謀にも派遣かふぇ＠国会を開くことになりました。

平日にもかかわらずご参加いただいた皆様、ボランティアでスタッフに加わってくれた参加者さん、足りない部分をフォローしてくださった参加者さん、ご協力いただいた石橋議員と秘書さん、派遣ユニオン関根さん、厚労省需給調整事業課職員さん、すべての皆様に感謝いたします。

スタートは国会見学から

大人になってからの国会見学は興味深いものでした。衛士さんに参議院と衆議院の違いなどを教えてもらいながら議事堂内を見学。重厚な造りは何回見ても飽きない美しさで神妙な気持ちになりました。

派遣ユニオン『派遣トラブル解決事例ベスト５』

続いては派遣ユニオンの関根さんをお招きして派遣社員の相談事例紹介です。第2回派遣かふぇで石橋議員から派遣ユニオンさんの資料をいただいたのですが、私は労働組合に加入した経験がなく、どちらかというと苦手い意識を持っていました。

派遣かふぇを始めて労働組合に加入されている方の話を聞いてみると、実は派遣のように弱い立場の人ほど必要な組織なのではないかという思いが芽生え始め、百聞は一見に如かずということわざもありますし、まずは話を聞いてみたい！と考え、今回協力をお願いしました。

①セクハラ

派遣先の上司から「子作り頑張りなさい」「〇〇に教えてもらえ」などのセクハラを受けていることを派遣元A社に「働きづらくなるのは困るので匿名で対応してほしい」と相談。ところがA社は派遣先Ｂ社に対して名前を出して相談内容を伝えてしまい、派遣先都合による雇い止めを通告された

相談内容：両社とも許せない。もうＡ社でもＢ社でも働きたくない。

派遣ユニオンが両社それぞれに交渉を申し入れたところ、両社より謝罪と解決金支払いを得ることとなった。

②3年ルールを理由とする雇い止め

3か月更新で10年働いていた。上司より派遣会社の期間制限がくるため継続して受け入れることが出来なくなったと伝えられた。

相談内容：派遣先企業で継続してはたらき続けたい。派遣でも直接雇用でもよい

派遣ユニオンが派遣元に申し入れをしたところ、派遣先が直接雇用することを約束。パート扱いのため時給が大幅にダウンしてしまうが時給ダウンによる差額2年分を派遣元が解決金として支払うことに

③マタハラ　その1

正社員求人に応募し、一次面接と筆記試験を通過し二次試験を受けた。担当者から「採用予定だが役員の決裁待ち」と伝えられたが、その後「筆記試験の点数が不足していた」「派遣社員での就業となる」と伝えられた。不満を持ちつつも、採用予定と聞いて他社の採用内定を断ってしまっていたことや1年後に正社員にすると約束したことから、渋々派遣社員として働き始めた。ところが、妊娠が発覚すると雇い止めを通知され、正社員採用の話もなくなってしまった。

相談内容：派遣先で働き続けるのは嫌だが、誠意のない対応が許せない

派遣ユニオンが派遣先、派遣元連名で交渉申し入れをし、謝罪と解決金支払いを得ることになった　

④マタハラ　その2

3ヶ月更新で働き始めて1年が経過したころ妊娠する。派遣先に伝えたところ契約を更新しないことが伝えらえた

相談内容：妊娠を理由に辞めさせられるのは納得がいかない。

派遣ユニオンが派遣元に交渉を申し入れたところ、契約打ち切りを撤回。産休、育休が認められた

⑤常用型派遣の長期休業

無期雇用契約で採用され倉庫での検品作業などに従事していたが、派遣先の仕事が途切れたため休業に入り、労働基準法上の休業手当（平均賃金の6割）はもらっていたが休業期間が6か月を超えてしまった

相談内容：休業は困る。平均賃金の6割では生活が出来ない

派遣ユニオンが派遣元に交渉申し入れをし、派遣先の確保、休業手当の増額、中小企業退職金共済への加入などの対応策を取り付けた。

即席相談会を開催

後半は、派遣ユニオンさんに直接質問や相談を出来る時間をつくりました。

①『ユニオンを使って交渉した後、職場にいづらくなったりしないか？』

自分の会社にも派遣さんがいる。ユニオンを使って交渉した後に職場にいづらくなったりしないか心配。

派遣ユニオンの回答

派遣先とのトラブルの場合、もうその派遣先では働きたくないという人が多く、ほとんどが謝罪と解決金を希望されているとのこと。派遣元とのトラブルの場合は、派遣先への影響はなく派遣元の正社員になったケースでは、むしろ派遣先での信頼度が上がり良い効果が出ているそうです。

この件が私が一番気になっていたことなのですが、謝罪と解決金という交渉結果について驚くとともに、誠意のない派遣切りや無期雇用条件を提示された人は、ダメ元で派遣ユニオンさんに相談してみたらよいかもと思いました。

②『非正規のパートで入ったらブラック。』

隣の社員がいじめの常習犯。嘘を教えたり嘘ではめたりする。仕事に行こうとすると吐き気が。研修もホワイトでブラック企業には見えなかった。上司に相談してもうちはブラックだからと取り合ってもらえず、その上司も一緒に嫌がらせをするように。キーボードが震えて打てなくなったため休職したところ雇い止めされた。この雇い止めは違法か。

派遣ユニオンの回答

それは違法です。お力になれると思います。ぜひ相談にきてくださいとの力強い言葉がありました。

③一人親方を派遣する違法な派遣会社がある。大工なのに工場内作業をやらされていた。

パートナーが派遣会社と裁判中という参加者さん。業務委託契約を結んでいたいわゆる一人親方のため、社保もなし労災保険も自分で払っていたが、やらされていたのは工場への派遣

派遣ユニオンの回答

協力できることがあるかもしれません。派遣ユニオンに電話してください。外出中でも留守電を入れてくれれば折り返します。HPからでもOKです。

④大手派遣会社の無期雇用転換時の時給切り下げ
無期雇用派遣の時給は1450円だが、いきなり下げると影響が大きいでしょうから派遣先を変えるごとに１０％ずつ下げますという説明をされたという参加者さん。
その説明は契約書には記載されずパウチされた用紙を見せながら説明、
その用紙は渡せないと持ち帰ったそうです。
あまりに酷い契約のため、契約書にはサインせず
内容証明で自作の契約書を作り送付したが、派遣会社仕様の契約書にサインするよう迫られている
サインしないといけないか？

派遣ユニオンの回答
サインしなくて大丈夫
何か言ってくるようならユニオンに相談してください

1人で相談に行くのは勇気がいりますが、グループディスカッションでの即席相談会ならハードルが下がって相談しやすいかもしれません。その場で予約が取れたりしたらもっと良いかなぁと次への企画のヒントも浮かんできました。

石橋議員の生質疑

昼食をはさんで、厚労委員会の傍聴に移動しました。

委員会室は半円形に議員さんが座り、傍聴席の目の前に厚労省職員さんが一列で座っていました。中央には根本厚労大臣。

廊下に回答する職員さんが待機されていて、質疑する議員さんが変わると担当の職員さんがサササッと入れ替わるのが新鮮で面白かったです。

数日前まで児童虐待法案についての質疑が続いていたのですが、一般質問のタイミングとなったため派遣法についての質疑を聞くことが出来ました。

質疑の内容は大きく３つありました。

雇用安定措置の効果について

2015年の派遣法改正の検証について、質疑を続けてきた石橋議員ですが、厚労省の報告が出ました。労働者派遣事業報告書によると、直接雇用を希望した人のうち2万人が実際に雇用されたとのことです。全体のうちのどのくらいなのかなど細かい数字も気になるところです。

それに対して、雇用の質や内容はどうなのかと詰め寄る石橋議員。正社員になれているのか、待遇はどうなのか。質疑動画をyoutubeにアップしたので、ぜひご覧ください。https://www.youtube.com/embed/QdIvK6naCnc?rel=0

社会保険の適用逃れについて①

続いては社会保険についてです。派遣、直接雇用に関わらず2か月以下の雇用期間であれば社会保険の加入義務はありません。これを悪用して最初の契約を2か月にする派遣会社があります。継続して雇用が見込まれる場合は最初の契約期間が2か月でも、社会保険に加入することが出来ます。

派遣会社または派遣先企業からの2か月以上の長期案件である説明があるにもかかわらず、最初の契約期間だけ2か月更新の契約書を出されたときは「社会保険に加入したいので3ヶ月にしてください」と伝えてみてください

石橋議員は、この件についても適用逃れが出来てしまうのは制度の穴なので、このままではいけない。改善が必要だと訴えています。

厚労省職員の回答は「派遣、直接雇用に関わらず同じだし、2か月を超えて雇用が継続される場合は2か月後から社会保険に加入できますよ」ともっともらしく応えるのですが、いやいや遡って2か月前から加入させてくれよと思ってしまいました。手続きに時間を取られるだけでなく保険料に天と地ほどの差があるのを知っているのかと小一時間ほど問い詰めたい思いに。

派遣脱出してブラック企業に転職した際に試用期間3ヶ月は社会保険に加入させてもらえなかったことを思い出し、あの会社やっぱりブラックだったのかと改めて確認させられる質疑でした。

こちらも質疑動画をアップしました。ぜひご覧くださいhttps://www.youtube.com/embed/ltTWdXOpcg8?rel=0

社会保険の適用逃れ②

次の質疑のきっかけは、フォロワーさんからのツイートです。twitterに投稿された派遣の愚痴ツイートのなかに、衝撃を受けるほどひどいものがありました。

すべての派遣労働者に知ってもらいたいと考え、フォロワーさんにお願いして公式HPのブログ記事にさせてもらいました

↓　↓　↓　こちらからご覧にまれます。　↓　↓　↓その派遣契約書大丈夫？？ 契約終了日の切り上げで社会保険料の支払いを回避する悪質派遣会社に要注意⁉ | 派遣かふぇ勤務日最終日の月末日が土日の場合、最終日を前倒しすることで社会保険料を逃れることが出来ます。社保逃れで最終日を変更した契約hakencafe.cew.cloud

フォロワーさんから今回の派遣かふぇは遠方で参加できないため、石橋議員に伝えてほしいとお願いされ、他の方からの現場の声と合わせた資料を事前に送付していたのですが、質疑で取り上げてくれるとは思わず驚きました。

その内容は『派遣契約終了日が土日の場合、終了日を金曜日にすることで最終付きの社会保険料を逃れられる』というものでした。毎月の契約書は平日が終了日だったため最終日の確認をせずにサインをしてしまったそうですが、こんな悪意のある契約書を作成するなんて想像もつきませんし、もちろん派遣会社の担当営業から説明もありませんでした。

契約終了の不安に加えて派遣会社の悪質行為、そして社会保険料よりも高い国民保険料の支払いがひと月分増えてしまう。何重にもショックだったと思います。

この質疑への厚労省の回答も、派遣に関わらずすべてがそうなっているという回答でした。「知識がない労働者が損をしてしまうような抜け道は塞いでください」という石橋議員の声が厚労省の方に響くと良いなと思いました。https://www.youtube.com/embed/uG706xy3KqU?rel=0

当事者のフォロワーさんに質疑されていましたよとお伝えすると、とても喜んでくれました。野党議員なので即改善とはなりませんが、厚労省や他の厚労委員会所属議員の耳に入るということは意味がありますし、政権交代が叶った時にこの抜け穴が塞がれ、派遣労働者だけでなく、非正規や正社員も救われると信じ、これからも派遣の現場の声を伝えていけたらと思います。

厚労省需給調整職員との意見交換会

厚労省需給調整課職員を招いての派遣かふぇが始まりました。需給調整課とは、派遣業のあれやこれやを取りまとめる部署だそうです。派遣社員のトラブルは労基ではなく需給調整局に行くのが近道。派遣の待遇や対応に疑問を持った場合は、こちらに問い合わせるのが良いそうです。派遣会社や派遣先企業がある都道府県の労働局が担当で、東京都は田町にあります。

厚労省職員さんからご挨拶

「霞が関にいると、労働組合やマスコミからの間接情報にとどまってしまう面があり、派遣労働者の当事者の方々からお話を聞ける機会と思い、本日参加しています。」

派遣制度についての統計やアンケート資料を持参しての説明があり

「派遣先への要望で「派遣契約がい業務を命じないでほしい」などがあるのですが、その他が2割弱いて、その他について今日お聞き出来ればと思っていますとました。」

派遣労働者の本音トーク炸裂

①無期転換の闇

無期雇用派遣の時給は1450円だが、いきなり下げると影響が大きいでしょうから派遣先を変えるごとに１０％ずつ下げますという説明をされたという参加者さん。
その説明は契約書には記載されずパウチされた用紙を見せながら説明、
その用紙は渡せないと持ち帰ったそうです。
あまりに酷い契約のため、契約書にはサインせず
内容証明で自作の契約書を作り送付したが、派遣会社仕様の契約書にサイン

②マッチングの闇

商社は若い女の子がいいという。仕事がどうだは関係なく若い女の子たちは商社にすごく多い。入ってくると事務職と言われていたのに、輸入業務を全く知らないので周囲から仕事が出来ないといじめられ、すぐ切られる。派遣会社のマッチングしっかりしてない。押し込めばいいと思っている。

某派遣会社は顔採用と言われていて数年ごとにプロフィール写真を取り直させられる。

③年齢の闇

資格での英語力でも正社員に劣らないスキルを持っている。上司の評価は得ていたが、外国人上司の帰国と共に派遣切りされた。どれだけ学位が高くても資格を持っていても、派遣は切りされてしまう。正社員を目指しているが年齢ではじかれてしまう。年齢差別は無いと言われいるが確実にある。

派遣会社は一切自分の専門性をわかっていない。英語面接に同席していても英語一切わからないと言う。でも私の報酬の3-4割は取られてしまう。

④ブランクの闇

私は子どもを産むときに正社員を辞めて非正規の道に入った。産休とってもどる人が少なく、考えにくく、子どもを産んでから二年してパートの仕事から始めた。ずっと派遣や契約社員。一度非正規になると、そこから正社員になるのは難しい。

⑤日雇い派遣の闇

課長クラスもやったが、3.11から雇用が下がり仕事がなくなり派遣社員になった。交通費込みで時給1400円。介護も始まりフルタイム勤務が不可能になった。生活保護受給もしてたが今は日雇い派遣に行っている。アパレルや倉庫等で、正社員がやらないような非常にきつい仕事で時給も低い。一日3万歩くらい。高齢労働者多い。9:00開始なのに7:40集まれと言われる。一番疑問に思ったのは世帯年収の制限があり派遣が登録できないこと。世帯年収500万円あったら、そんなきつい派遣の仕事はしない。

⑥非正規脱出の闇

9年くらいずっと派遣。氷河期。大学でて仕事なく、専門学校に親に頼み込んで行かせてもらって、企画の仕事になったがデザイン業界は30代ではいずらいくなり、正社員の仕事を追い出された。教育訓練を受けて今Webデザインの仕事を目指し派遣で9年くらい。

派遣社員は派遣元の社員でもなく、派遣先の社員でもない。てい良く使われる。契約が切れたらそれで終わり。年金も退職金もない。正社員の仕事を探しているが40代ではない。200通出してもない。自営業しかないのか、でもそんな資金はない。派遣社員を多用する社会情勢がおかしいのでは。

⑦無期雇用の闇

去年の四月に無期雇用の話が来て無期雇用になった。社員と同じなので派遣先から切られたら次の派遣先は自分では選べず、必ずそこに行かねばならない。交通費は出ないので、仕事場所は自宅から通勤2時間以内となっても自腹で通わなければいけない。今の派遣先との契約がおわった場合、自宅待機で60%支給されるが解雇や時給ダウンもあり得ると。有期契約に戻してほしいと言うと、それは出来ない。再登録になるので今までの経歴や有給はリセットと言われた。

厚労省職員が絶句

現場の声にただ驚くばかりの職員さん。時々それは違法ですね、という言葉が出るだけ。、一通りの話が終わり、職員さんから質問が。

『派遣元での研修を義務付けているのですが、どうですか？』

「エクセル初級とか。それやると正社員になれるのか。」「派遣は物と同じ。物にお金はかけない」

『雇用安定措置について派遣元から説明することになっているのですが』

「建前はそうだけど実際に説明はしない」「説明会を開かず一人一人に話す。まとまらせたくない」「知識をつけたくないのだろう」

「糾弾されると覚悟してきましたが、お話が聞けて良かった。派遣制度を良くしていきたいという気持ちで働いていたが、一方の話しか聞けていなかった。」

『ここなら大丈夫という派遣会社がありますか？』

「派遣会社はどこも同じ」「良い派遣営業ほど辞めてしまう。普通の神経では出来ない」「担当者の質というより派遣制度自体に問題がある」「更新するかどうかを聞きに来るだけ」「不満は聞いたら派遣会社にとってマイナスになるから」

『派遣元台帳にはきちんと書かれているのか』

「派遣会社が好き勝手書いている」「そもそも見られない」

意見交換会を終えて

終了時間が来ても尽きない話に、職員さんは「私はあと15分くらい大丈夫です」とのことで延長となりました。最終的には30分オーバーで終了となりました。

「派遣会社と意見交換会をすると、派遣会社は派遣社員のために仕事をしていますというのですが」という言葉に、会場内は爆笑。

最後に「糾弾されると覚悟してきましたが、お話が聞けて良かった。派遣制度を良くしていきたいという気持ちで働いていたが、一方の話しか聞けていなかった。」話してくださいました。

派遣社員の声が厚労省の職員に届いたと嬉しい思いがある一方で、今まではまったく届いていなかったことに驚きました。派遣制度を良くしたいという思いで働いている厚労省の職員さんが報われないという思いも。

厚労省の政策が現場でどう運用されているか伝えていくことの大切さを感じました。

トリは石橋議員

厚労省職員さんとの意見交換会が伸びてしまい、石橋議員との派遣かふぇはなくなってしまいました。でも「どうぞ、続けてください。こんな機会は滅多にないから」と優しい言葉をかけてくれました。

最後は参加者のみなさんと握手して、党の会議に向かう石橋議員を見送りました。

派遣かふぇを終えて

このような大きな仕事をすることがなく、段取りや司会などボロボロで、どうにか無事に終わって良かったというのが素直な感想です。キャパオーバーで燃え尽き症候群でしたが、やっとレポをまとめたり次回派遣かふぇに進む気力が湧いてきました。

派遣社員の退職金や時給アップなど厚労省が新しい対策を出してきていますが、それを受けて現場の運用がどうなるかタイムリーに声を上げていきたいと思います。